君の声は/ウデラコウ
君の声は
雑踏と春雨に 酷く良く似合う
その低く耳に優しく残る声色を 聴きながら
騒がしく行き交う人々の中で
曇天から静かに 降り注ぐ
糸のような 針のような
雨を見上げて
その至福に酔う
距離を越えて 届くその色を
今すぐ 迎えに行ってしまおうか
そんなコトを考えては 口にしないで
静かに 笑って
あぁ なんて 愛しい瞬間なのだろう
僕が生き返ってゆくよ
君の声が 身体におちて
全てを優しく打つ 春の雨のように
僕を何よりも 強く 柔らかく 包み込んで
もう決して 離さないよ
僕の声も 君を包む優しさに
なっていれば いいなって
願いながら
ふと見上げた空に
僕は一度だけ 目を大きくした後
少しだけ声を出して 笑ったんだ
やっぱり君は 魔法使いだね
あれほど 降り続いていた雨が止んで
君の声が 春の陽を 運んできてくれたよ
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