「始」/山中 烏流
 
始まりの色に染め上げられた
空気に浸かって


呼吸を開始しようと
している


まだ
何も始まっちゃいない
いないのに

僕は産声を
上げた気で いる


ここより遥か先
見えないくらい遠い場所

その場所を只 夢見ながら

感じている
生きようとしている
の だろう


まだ
柔いお尻は
叩かれていない


(酸素が 足りない)


始まる前に

終わりたくは
ない

ないから


ぱちん
鳴る スタートの合図

肺が収縮を始めて
声帯を震わせる


生命が 膨らんで


おぎゃあ。
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