さそりの火/鯨 勇魚
航海の繋ぎ合わせ
不定調で繰り返す波が
心音だと知りました
ひろがる海の、
セイタカアワダチソウが群生して
隠す向こうには香炉です
あるいは燈籠の火でしょう
それは暗闇が広がりきると
ところどころに
見えはじめたのです
あんなところにもひとつ
またみつけました
これが記憶の断片です
砂の岬といわれていた
最南端の港に
空は低く静けさは
積もる雪そのままに
降り積もることも
わからないでいる
真冬の障子裏のようで
街の中心の石像
今は語りはしないのです
木々も揺れることはなく
何も伝えてはきません
祈りの教会目線は遠回りに
生
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