春の鼻/はらだまさる
他人の死に心痛むのか、と
考えあぐね、顎を摩る指先で
独善と自責の弧を描き
弁証法のその先は
八百万(やおよろず)の神々も
沈黙なさる
なんと云う無力さ、
私はいまも斯うして
臍(へそ)のうえ
女の
臍胡麻の
匂いを嗅いで
生まれ来る
いのちを
待ち侘びている
山吹のような
芳香の
臍のうえで
註
※乱擾…らんじょう。乱れ騒ぐこと。
※辻斬り…つじぎり。武士が刀の切れ味を試し、また武術を磨くために、夜間、路上で行きずりの人を斬ったこと。また、斬る人。江戸初期横行し、幕府は禁令を出して引き回しの上死罪とした。
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