通学途中/山中 烏流
ふと
見上げると
ゲル状になった空気と
鉛になりそうな空と
にらめっこになった
僕は向こうの
ビールの看板を見たいのだけれど
そういう訳には
いかないらしい
視線を掴んで
離してくれない
香ってくるのは
朝の、湿った
爽やかな香りなのに
目に映るのは
都会の、淀んだ
ゲル状のものばかりで
でも
負けたくないから
目は、逸らさない
長い時間
(とは言っても、三分くらい)
にらみ続けたら
ぽろり
空が泣き出した
ゲル状が
溶け出して
空気が変わっていく
泣かせるつもりはなかったのに、と
笑いながら
僕は視線を戻して
バスを降りた
今日は
僕の勝ち
らしい。
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