間奏/及川三貴
窓を無心に磨く雨音で
鉱石のように凝り固まった背中
手元に空白のノート
ペンは柔らかく握られたまま
冷めてしまった珈琲が
あなたの唇を忘れていた
とても低い声で唄い出せば
思い出すような気がして
雨脚追って始まる二つの音が
口から落ちて水面に円を描き
あなたはこの午後の
雨色に当てはまる言葉を探そうと
喉の奥で息を始める
床の上をさざ波立てて駆ける風が
悲しい予感を震わせて
後ろから背中を強く抱くと
窓は溶け出して
外は冷たい海
色のない雨の中で
最後の踊り
始めるあなたの為に
耳元で探していた言葉を囁く
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