今朝マリエンバードで/三州生桑
朝早くにジョギングしてゐたら、急に雨が降ってきた。
最近の天気予報は、まったく当てにならない。
雨宿りするために歩道橋の下に駆け込むと、女が立ってゐた。
真っ赤なキャミソールを着た、痩せぎすの若い女だった。
まだほの暗い、朝の五時過ぎに、雨のそぼ降る中、歩道橋の下に立つ女・・・。
少々怪談じみてゐる。
女はしきりに髪をいぢってゐる。顏を隠さうとしてゐるかのやうに。
怖がらせてはいけないと思ひ、私はサングラスとキャップを取って話しかける。
「通り雨でせう。すぐにやむと思ひますよ」
「・・・」
「お仕事帰りですか」
「ええ」
「こんな時間までやってる店があるんですね」
「
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