カメさん/楢山孝介
カメさんは実は亀だという
浦島太郎を竜宮城に連れて行き
数百年後に地上へ連れ帰ってきた亀だという
玉手箱を開けてしまい
よぼよぼの爺さんの姿になった太郎に同情して
地上で一緒に暮らしているうちに
よぼよぼの婆さんの姿になってしまい
海へ帰れなくなってしまったのだという
太郎を背中に乗せた時の
ときめきを語るカメさんは
老齢を感じさせない色っぽさをかもし出している
太郎はほどなく亡くなったものの
カメさんは何せもともと亀なので
一万歳にならないと死ねないので
仕方なく長々と生きているという
「また昔みたいな出会いがないかと思って
浜辺をよく歩くんだけど
この恰好じゃあ子供たちはいじめてくれなくてね
それによく考えたらせっかく助けてもらっても
竜宮城へ連れていってお礼出来ないのよね
潜り方忘れちゃったし」
海を見つめながらカメさんは寂しそうに言う
話を聞いているうちに
何だか顔が火照ってきたわたしは
思わずカメさんの頬にキスをした
「女とはごめんだよ」と一喝された
怒るカメさんはちょっと可愛かった
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