擬恋法/倉持 雛
 
単調な毎日に
少しのグラニュー糖をプラス
 
教室の窓側の席
右斜め前の彼を
好きだとする
 
なぜ彼かというと
切れ長の目が
綺麗だと思ったから
 
この恋には
充分すぎる理由だ
 
そんな彼を目で追う
毎朝の挨拶を楽しむ
 
消しゴムを拾うときの触れた手
思わずドキリとした
実に良い兆候である
 
僕の心は
妙な満足感で満たされた
 
彼を好きだと錯覚することで
何かしらの変化を得た
そのことが嬉しかった
 
だから愛してほしいというわけではない
あくまでシミュレーションゲームのようなもの
そう、悪質な例え話
 
僕は ただ
空っぽの心に
砂糖味のスパイスがほしかった
 
(何かを取り戻したかったのかもしれない)
 
八分の一秒にも満たない
この存在に
何かしらの意味がほしかった
 
(こうしてバランスをとっていた)
 
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