雨と目玉とブッダと空腹/はじめ
 
 6月の京都の雨の暗い午前中に縁側で印象派の絵を描いている 庭には草木が生い茂っていて屋根からぽつりぽつりと雨が垂れている 僕はそれがやけに気になる 草木の湿った匂いがする 居間には僕の描いた絵画や印象派の本が散らばっている 僕は無料でこの家を借りている 築30年以上経っている家だが 僕にはとても住みやすい この絵からはこの庭はとても明るく表現されているように見える 自分で描いたのだが集中し過ぎて他人が描いたもののように見えるのだ
 雨音に紛れて微かにヒキガエルの鳴き声がする 僕はヒキガエルを潰して血の色でこの庭の絵の最後の一筆を入れる想像をしてみた その想像は何の残酷さも無く 僕はその後の筆と
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