魚に嫉妬する/宵色
 

真昼の空の海底に
ゆらゆら浮遊する金魚たち

レトロモダンな窓から眺めて
私はあれを夢見がちな彼女が見たらどう思うかしらと一人考える


「最期は深海魚になるの」と言った彼女は妄想癖で、
自由すぎる程にこの世界を泳ぐ


美しい物だけを追って現実を夢に変える彼女なら
きっと指を差し、言うのだろう


『私もそこに還るわ』


なんだかそう思ったらやけに彼女が憎らしくて
(だって私が望めもしない美しい物を彼女はたやすく掴むだろうから)


もし彼女が指を差す時が来たら、
私は躊躇もなくその指を覆って、隠してやろうと決めた
(折ってやってもいいけれど、それはさすがに可哀想)



海底に自慢気に揺れる幾重もの赤いドレープを睨んで、
私は嫌な奴みたいに皮肉っぽく笑ってみせた





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