子どもの昇天 ?海?/輪橋 秀綺
を棄てよう}
二度と戻れないことに負の価値などないのです
泡の音を感じると 私の鰭は完全に分離します
「戻るつもりはないけど待っててネ」
さよならを無理に婉曲してしまってから
私は海を棄て 鰭は二本の足になり
僕は二足歩行を始める
生まれたばかりの仔鹿のあどけなさで
ゆれゆれる世界の隙間で
見上げれば 星
意識の向こうの奥に落ちて
そこには 孤独が揺れています
僕はさよならを直球に託して
曙 涙の代わりに雨が
雨が僕を 海を 光を
裸足で 丁寧に 叩いていく
水面には 先祖様が揺れています
海底には 仲間達が恋しいのです
大地の
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