老婆の休日/服部 剛
を入れた祖母は
大きく瞳を開いて頷いた
「 今日の会、親戚来ないの? 」
「 妹は今イタリア行ってるからねぇ 」
「 ぼくもいつか異国の街をふらつきたいなぁ 」
「 わたしはローマに行きたかったわ 」
「 ローマに行く前に老婆(ろうば)になったねぇ 」
「 かわりに今日は、老婆の休日よ 」
( 今頃
( 鎌倉の霊園では
( 祖父の墓に彫られた仏様も
( にっこり寝転んでいることだろう
新橋駅に着いた
東海道線が停車すると
腕を一本さし出した
ぼくを支えに
開いたドアからホームへ
溝をま
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