‐産業動物臨床基礎実習‐/士狼(銀)
が、その姿が、私たち一年生を苦しめる。
学年が上がると、いつか、班単位で世話をしたビーグルを一週間かけて解剖する経験に衝突する。死体を解剖するわけではない。自分が世話をして育てた子を、勉学のために殺すことになる。
それを乗り越えられるか。
乗り越えるしかないのだ。その命を無駄にしないためにも。
実験動物や動物実験の在り方については賛否両論ある。動物愛護団体をはじめとして、多くの「動物愛好者」の方が反対意見を出す。
しかし、私は、実習経験のない医者に診てもらいたいとは思わない。診察にしても手術にしても、最後は知識ではなく、経験と技術と熱意がものをいう。
私は、祖父母の期待を裏切って獣医を志し、親戚一同が医者という環境の中、そういった、経験がものをいう「事態」についての話を聞き、また、手術状況を説明してもらってきた。
獣医も同じではないだろうか。
私は動物が大好きだが、それ以上に、幾つかの犠牲を糧にしてでも救いたいというエゴを持っている。
尊い犠牲の上に習得する知識と技術と、実のある経験があるのだと思う。
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