手遅れな男/服部 剛
 
あるい背中に泡立つせっけんを 
シャワーで流す 

認知症の婆ちゃんの着物を 
すみやかに脱がせると 
「おじさんやめて〜」と叫ばれて 
「おじさん」という言葉に苦笑い 

休憩時間に更衣室で着替えてうつむくと 
いつのまにか 腹が出ていた 

その夜、わたしは突如走った 

余分な肉を落とすべく 
いつも立ち寄るファーストフードをスルーして 
「腹よ凹め、腹よ凹め」と念じつつ 
バス停からバス停へ 

バスに乗り
座席にへたって座ると 
リュックのチャックのすきまから
おととい持ち帰り忘れた作業着とパンツが 
ぷうん と臭った 




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