優縁台/チグトセ
 
イトを僕に勧めたので
僕はうなずいた。
あなたが
「友達に彼氏を自慢できない」
とどうでもよさそうな、心底哀しそうな顔をするので
僕は大学生になろうと思った
あなたが喜ぶと嬉しいので
受験勉強も頑張れた
そして入った大学で
幾人かの友人と知り合い
僕は世の最果てから現実へ
少しはみ出せた。
動力炉やパイプやバイパスがごちゃごちゃしている清廉とした場所から
土煙の重低音のする場所へ
少しはみ出せた
でも僕は結局
そちら側に行くことはできなかった
「どうしてそんなところにとどまりたがるのか」
あなたは僕を見て悲しんでいた

ねえもし
僕の書いた本が売れて

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