優縁台/チグトセ
 
あなたは就活のためにと家庭教師のアルバイトを僕に勧め、僕はうなずいた。

謝らなくちゃいけないことがある
本当のところ
あなたと出会った時点ですでに
僕はこの現実世界にいなかった
半分もいなかった
その意味で
僕はあなたを二年半もだましていたんだ
ごめんね
僕は口下手で
そういう真実の片鱗を少しずつ
ぽつりぽつりとあなたに伝えた
「伝えた」つもりでいたけれど
よく考えてみればそんなので伝わるはずない
伝わるはずなかった

でもあなたは
普通の若者の中に紛れ込んでいるようでいて
ときに
聖人のような直感と洞察力を発揮するから
もしかしたら僕のことを悟っていた
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