陽だまりの幸せ/朽木 裕
 
ティースプーンで幸せをひとすくい
お味は如何かしら?

きらきらスプーンの上で溶けていく優しさ
粗目の砂糖に緩火の太陽
ブルーベリィの熱い紅茶

築40年の古アパートの一室
取り壊しの決まったカフェ

ぎし、と軋む床は古びて
並べられた北欧雑貨

鹿のかたちのクッキーはぴりりと生姜味

美味しいね
可愛いね
こういうのいいね
いつかやれたらいいね

あたしねー貸本屋、やりたいんだ
いいなぁ通っちゃうよ
二人でさ、なんでも出来るよね
出来るよ、きっと
部屋の中に写真を沢山飾りたいな
ラボみたいなの、
そうそうそれ

あたしより20センチ以上背の高い彼女と
彼女より20センチ以上背の低いあたしは
それぞれ愛用のカメラを構えて夢を語る

惜しげもないその空想は
いつか
いつの日か実を結ぶのだ

あたしはそう信じてる
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