春雷、残響/銀猫
 
花曇の四月から
薄灰色の雨が零れる
桃や枝垂れ桜の
薄紅のあいだから
無垢のゆきやなぎは零れ
春雷の轟きに驚いてか
ちいさなゆき、を降らせている

その様子は
あまりに白くて
白、で
わたしはすこし哀しくなって
ひとくちの花房を食んでみた

苦く青い「ミ」の音が反響する
中指で鍵盤を弾いたように
きん、と残響が耳の深くに刺さり
花房は揺れて
更に白を増している

春はこうしてかなしみを隠していた
そう思うと
健気な草花や絢爛の桜
風景のそこかしこが
潤んで
潤んで
何故春の日に
泣きたくなるのか
分った気がした

桜三月
春四月
今宵の月は朧に霞み
まなこの潤みの向こうで
明けては暮れる



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