馬鹿な風/楢山孝介
「悲しい」と女が言うので
僕が代わりにに泣いてやった
「故郷へ帰りたい」と女が言うので
僕が一人で女の実家を訪ねてやった
「子供を産みたい」と女が言うので
僕が代わりに産んでやった
「もう死にたい」と女が言うので
僕が代わりに死んでやった
「馬鹿ね」と女が言うので
僕は馬鹿な死体になった
「冗談はやめて」と女が言うので
僕は笑いながら生き返った
「ほんとに馬鹿ね」と女が言うので
僕は本当の馬鹿になった
「悲しいわ」と女は言ったが
僕は馬鹿なので泣けなかった
「さようなら」と女は言ったが
僕は馬鹿なので意味がわからなかった
女は
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