幻想曲/倉持 雛
ぼくの作り話
きみは泣きながら
うん、うん、って頷くから
なんだか可愛くて
宝物のオルゴールをあげた
十年前に流行った
あの名曲が
今を迷いながら流れているのを
ぼくら ふたり
寄り添いながら聞いて
ときどきキスをした
きみの長い前髪に隠れた目は
とても綺麗で
ずっと見ていたい
なんて、思ったりして
この時間が
できるだけ長く続くように
そっとお願いをした
本当は全部嘘なんだって
言う気なんか
もう少しもなくて
オルゴールがとまるまで、
とまるまでは
この曲と一緒にさ迷いながら
幻想感に浸りたい
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