花冷え/水町綜助
 
いま
仄(ほの)明かりの部屋がとても寒くて
ぼくは
コカ・コーラの気が抜けてゆく潮騒の中で
花が開いていくのをじっと見ている
足が冷たく
息の僅かな白さの中に
ちいさな子供だった頃の
うすい瞼にあたった光彩を思い出している

  *

目を開いていく
花が開いていく
時間
その
ながさ

瞬間
というふたつの
うその中に
きみを置いて行き
枯れていくのを
見ていた
枯らしていく
つもりもなく

  *

きみ
みぎ手の
手のひらを
ゆっくりと
ひらいてみてくれ
おやゆびから
一本ずつだよ
もちろん
二本でも
三本だ
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