朝の傾聴/はじめ
 
 朝なのに彗星の流れる音がした
 朝の森閑たる雰囲気を突き破り
 僕の家の隣の道路を通っていった
 それは自動車の奇妙な睦月の風を切る音だった
 一つ大きくプシュー と頷いて バスがアイスバーンに足を取られながら全力でエンジンを噴かす
 バスが去ってしまった後には静寂しか残されていない 雀の声さえも聞こえない 何処へ行ってしまったのだろう
 僕は意識的に時計の音に耳を傾ける それは差し迫る時間を刻々と縮めているのだ 針が瞼の筋肉を無意識的に操る 僕はまた深い眠りに就くのだ
 耳で聞き取るだけで後はそれに肉付けする空想の世界 トラックが近づいてきて新築のくせに脆い造りの家がビリビリと震
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