*波止場ポート/チグトセ
夜が明けると波止場ポートの灯台は
徐々に群青の色が抜け、
映えのある黄緑色に落ち着いた。
僕たちに対して親密な光はここにようやく「始まり」というストーリーを送り、次に「終わり」というストーリーが送り込まれるまでには、まだずいぶんと時間がある。
決して長くはなく、それほど短くもない、ひどく中性的な長さの時間。
公衆トイレの正面入り口は落書きがされていて、
赤いスプレーの染みが土に落ちて固まっている。
「何のことやら」
僕は苦笑する。
もちろん、それは公園の隅にある立派な公衆トイレなので、
こんな落書きをすれば多少は何かしら問題があるだろうけれど、
とにかくそこには赤い文字で
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)