色彩/
松本 涼
無数の花びらたちが帯のように
川の両端を縁取りながら流れている
私は冷たい雨にかじかんだ手のひらで
傘を握り橋の上からそれを見ていた
けれど川にも街にも花びらにも色は無い
ふと見れば傘にも握る私の手のひらにも
全ての色はこの冷たい雨に流されて
川の底深くへと沈んでいったのだろう
そうして雨に濡れないものたちだけが
今夜どこかでひっそりと
色彩を守っているのだ
遠い日の暖かな食卓を囲むように
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