午後の花/はな
「スカンジナビアってどこ?」
と言いながら
あなたは新聞をめくる
外は
風が吹いていて
きのうの雷はちりとなり
ふりそそいでいる
わたしは
「知らない」と
面倒そうに言ったけれど
あなたは気にもせず
「スカンジナビア、」
口先で
もう一度
つぶやいた
生れて二十年 東京にいて
それでも
ふとした夜のすきまで
ときどき おしつぶされてしまうのに
スカンジナビア、
濃紺
やわらかなつき
ぽかんとしたそのばしょで
深く
心臓のおとだけが
ひびく
ほほにあたる
たたみのざらざら
知らない国
その国々は
あなたのゆびで弄ばれ
狭い台所で
みどりいろに
染まる
泣きそうな位に
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