連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
わがままでいることは素敵なことだ
とりわけ旅人が
空と地の境界線を見つめていて
そこに向かって歩を進めている時には
旅はいつまでもつづく
それは鏡を見つめること
終りのない 自らに出会うための旅
*
(針のない時計に)
(確かな時を与えるため)
(亡命者は歩きつづけて)
(川にたどりつく)
*
旅は終らない
祈る人は
今日も歩いている
またもうひとつの
旅
それはいつの間にか始まっていて
いまもつづいているのだが
思えば
遠い記憶の中でも彼は
こんな旅をつづけてきた
いま祈る人が歩く
この川に沿って
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