連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
歌う川
――十一の変奏曲
{引用=
一
川は
歌う
膨大な水の旅客を乗せて
すべての山と谷を後に残して
流れながら
歌う
二
祈る人は歩いていて
川は流れていて
その間も遠いふところは
潮の満干を繰り返していて
血は流れていて
水は流れていて
その循環は大きな庭の中で
互いに共鳴し合っていて
鳥は飛んでいて
星は落ちていて
歌の言葉を伝えることが出来ない
そのもどかしさに動かされていて
魚は泳いでいて
人は溺れていて
その周りで水の群集は
いつも哲学者の顔をしていて
岩石は眠っていて
隕石は目醒めて
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