時雨れる少女/こしごえ
 
とおくみつめる

あの秒針の刻む音が
きこえるほどの しずけさで
あやしくぼんやりとした曇天に
にじむ光の粒子を
私も刻む
時のまなざしは熱かった
 始まりは、秋の縁側で
ぶらさがっている風鈴の
身じろぎはせずに連なっ
ている余熱のしわざだっ


やがて
仄暗い庭で
繁茂している清廉な呼吸に
さざなみたつ胸の奥のひろがりを欲して
風にそよぐ影のあつさよ
ついに奏する調べよ
なみうちはじめた雨音に
かなしみの骨格が透けて
うすいそこから微笑みがこぼれる
おりかさなった層から
未来製の水晶が
稲魂(いなたま)を放つ
無機質な内臓の深淵で

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