桜吹雪〜小学校五年生の春〜/壺内モモ子
 
ぶわっと大きな風が吹き
桜のはなびら宙に舞う
私の中を
ぐるぐる回って
静かに地面に落ちていく

私は走る
皆に抜かされないように
ひたすら走る
走る
淡いピンク色のグラウンド
美代子ちゃんのブルマー
桜のはなびらがついている
たったそれだけで
同じクラスメートのはずなのに
いつもと違って見えた
肌が白くて
他の子よりも身長が高い
私の前を走っている美代子ちゃん

男子がサッカーをしている
ボールが私の腕にぶつかる
美代子ちゃんが
「桃子ちゃん、だいじょうぶ」
って言って後ろを振り向く

そして
男子の視線を感じた瞬間
地面に落ちた桜のはなびら
赤く染まった
まるで血を流しているかのように
赤く染まった

ぶわっと大きな風が吹き
桜のはなびら宙に舞う
私の中をぐるぐる回って
静かに地面に落ちていく
私も静かに地面に倒れる
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