連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
の中では
彼方からやってきた隕石の芽が
育ちつつあった
川は歌っていて
川は流れていて
それを立ちつくして見つめる
祈る人の口から突然
膨大な量の祈りの言葉がきかれた
それは
天の水瓶から水があふれ落ちるように
滞りなく
彼の喉からほとばしった
その祈りの
激流の中で
言葉たちは周囲の空気を侵略し
その版図を広げた
祈りは
この宇宙の
あらゆる混沌と秩序のために
一昼夜
つづいた
}
太古の川
――祈る人の独白
{引用=
川よ
俺はいま
大陸の尻尾に掴まって生きている
かつては「川」そのものだった俺だが
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