ホーテンベイリー/シリ・カゲル
インセラーがない
もう何年も前から欲しいのだが
酒類をたしなまない妻の決済がなかなか下りないのだ
しかし、今度のボーナスでは是非ワインセラーを買おう
そんなことをぶつくさと考えながら冷蔵庫を開け
ワインは赤と白のどちらにしようかと迷っていると
ホーテンベイリーが虫垂炎を散らしながら僕に囁く
「ちまきに合うのは白だ」
しかし僕はちょうどその時
密猟者に狙われた可哀想なライオンの親子のことを考えていたので
ホーテンベイリーのアドバイスには耳を貸さず
タンニンの力強い赤を選んだ
すべての食事が時間通りにテーブルに整う
妻はあと5分もすればいつものようにジムから戻ってくるだろう
タイタスは息子たちの生首を目の前にして言う
「この恐ろしい眠りに終わりはないのか?」
だが我々にとっては
こういう穏やかに暮れていく一日こそが
最も恐ろしい眠りなのかもしれない
ところでキッチンでは
赤ワインでほろ酔い加減のホーテンベイリーが
「うまい、うまい」と言いながら
皿に盛りきらなかったサラダとパスタをあっという間にたいらげた。
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