19 very short stories/в+в
 
死んだオルガン
蜂の巣を味方につける

骨を奪われた孔雀
地面を這い湖へ向かう

上昇する若い胃袋
頭から犬を喰べ尽くす

口のなかの未来
咀嚼して全部吐き出す

指先に飛び出した秘密
再び開閉を繰り返す

熱に浮かされた災難
振り子のように往復する

百年待ち続けた遮断機
水に漬かり産声を上げる

小さな箱のなかの吐息
干からびて叫び続ける

皿に盛られた柔かな刺
尖った舌先で詰られる

暗がりに迷う裏切り
蛇口から勢いよく溢れる

塗り潰された黄昏れ
蝋燭の火で燃え尽きる

路線図で育った性器
小さい声で悪態をつく

瓶に詰められた名前
空気に触れて酸化する

月の裏側のカンバス
茹でた蛙を吸い寄せる

教科書に載った胸騒ぎ
遠心力で指を鳴らす

粉々に飛び散った悪童
部屋の隅で口笛を吹く

紋白蝶が嫌がるお祭り
屋根裏部屋に灰を溜める

風に吹き飛ばされた腕
獰猛な鳩を捕まえる

見ろよ

19番目の物語の途中で
言葉が慌てて逃げていく
戻る   Point(2)