カラスは空にいない/
 
空が青いから
僕は屋根を焼く
焦げて崩れたその隙間から
青かった空を覗く
思うほど息苦しくもない午後
崩れた屋根は既に屋根ではなく
いつまでも煙を空へと飛ばし続ける

僕は灰空を見るのを止めて
崩れない壁に埋め込まれた窓の外を眺める
一秒遅れで景色を見る人の群れ
一羽のカラスが微笑みながら
一人一人に挨拶をして回っている
返事はあるのかないのか
ここからでは何も聞き取れないが
表情の移り変わりがあるのは確かだ
それがどんな感情を表すのか
僕にはわからない
わかるのは空の色だけらしいと
いつ気づいたかも覚えていない
群れの色は目まぐるしく変わり
カラスは微笑
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