連作「歌う川」より その1/岡部淳太郎
まよっている
彼は哲学者
あるいは僧侶
祈りによって生きることを選んだ
最初の人類だった
かつて地球は 生きていた
完璧なまでに 生きていた
だが 見よ
いまや地球は 死につつある
完膚なきまでに死につくすまで
あと一歩
だがいまも
深い森と
高い標高に支えられた
山の中で
やがて大河となる川の
最初の一滴が
流れつづけている
それは宇宙と脚韻を踏みながら
地を潤し
草を動物を人までも 潤して
この大地の血管
川となる
哲学者であり
僧侶でもある
ひとりの男
彼は ひとつの川の
水源の前でたたずんでいる
(人は)
(自らの源流を確認
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