1997/水町綜助
こめると
太陽なんだ
とそいつにむかって見せた
べっこうのようなそれを見た男は
よくわからないという顔をして
ぼくもほんとうにいい加減なことを言ったと謝って
じゃあ
といい合い東と西にそれぞれ分かれて帰った
ぼくは歩きながらさっきの飴を口にほうりこんだ
舐めずに噛み砕いたそれはやはりいのちで
まるくちいさな緑色の甲虫のようないのちで
甘くてつややかに堅くて
潰すとなかはしめっていて苦かった
噛み続け
粉々になって溶けたそれは喉に絡みついてなかなか離れないので
ぼくは何度も咳払いをしながら歩いて
同時にいくつかの密かな驚きに震えていたが
歩調の思ったよりたしかなせいで
ひとつ歩を進めるたびに ゆれて 落としてしまい
一つだけ残して忘れてしまった
なによりもいちばん驚いたそれは
そのときぼくが取り出してながめていたぼくのこころと
いのちが
同じ味だったことだ
りゆうのない不安と
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