1997/水町綜助
フ と目の前に綿毛が飛んでいたので
ク とつかまえて離して見ると
それはチカリと赤い血の玉で
もう一度握ってはなすと
捩(よじ)れてつぶれて菱形のいのちに変わった
目の前では
町で一番の大通りが日没と日の出を繋いでいて
色とりどりの
その実白と黒と銀色だけの車たちが行き交い続け
いちにちを運び
そのようすを
気が遠くなるほど切られないシャッターで写し続けている男がひとりいて
連続して
ながれた小刻みな残像を重ね合わせて
塗りつぶして
それでもまだ連続して
ぼくは菱形をもう一度丁寧に指の腹でつぶして飴の中に閉じこめ
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