家族/健
は何も書かれていない
姉弟という役割があって
ただ僕たちは顔だけが似ている
わからないということを 必死で伝えあうために
※
小さい頃の記憶は
ひどく曖昧で
写真のように散らばっていた
それは僕のものではなく
語ってくれた誰かのものなのだろう
壊れるのが
少し怖い
※
親
子供
結婚した人
友達らしき人
医者
警察官
消防隊員
悪魔
神様
昔の自分
理想の自分
本当の自分
どこかに行った自分
※
同じと名付けられた空の下
人ごみに紛れて
手をつないだ気になって歩く
誰かが立ち止まったなら
きっと気づかずに離れていく
一人では生きられない暮らしの中で
僕たちはどうしようもなく他人だった
※
違和感で薄まっていく日々に
ゆっくりと
悲鳴が遠ざかる
いつかはその色さえも
わからなくなるのだろう
一人夕暮れる部屋の中
行く当ての無い
おかえり
が反響している
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