家族/
 
は何も書かれていない

姉弟という役割があって
ただ僕たちは顔だけが似ている

わからないということを 必死で伝えあうために







小さい頃の記憶は
ひどく曖昧で
写真のように散らばっていた
それは僕のものではなく
語ってくれた誰かのものなのだろう

壊れるのが
少し怖い








子供
結婚した人
友達らしき人

医者
警察官
消防隊員

悪魔
神様

昔の自分
理想の自分
本当の自分

どこかに行った自分







同じと名付けられた空の下
人ごみに紛れて
手をつないだ気になって歩く
誰かが立ち止まったなら
きっと気づかずに離れていく
一人では生きられない暮らしの中で
僕たちはどうしようもなく他人だった








違和感で薄まっていく日々に
ゆっくりと
悲鳴が遠ざかる
いつかはその色さえも
わからなくなるのだろう

一人夕暮れる部屋の中
行く当ての無い
おかえり
が反響している


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