盲目なメガネ/ぽえむ君
メガネは目が見えなくなってしまった
どこに何があるのかわからない
手探りで記憶と慣れを頼りにしながら
必要なものを手にとるしかなかった
メガネにとって
目の前も頭の中も全てが真っ白だった
目以外で感じとるしかない
横になりながら医者が来るのを待つ
時は長く感じた
壁にかけてある時計の秒針が
心臓の鼓動に響き渡る
春の風が窓から入ってくる
遠くで小鳥の鳴き声が聞こえる
今日はきっと気持ちのいい天気なのだろう
メガネは今まで気づかなかったものが
見えるようになった
薬品の匂いがする
きっと医者が到着したのだろう
車に乗せられどこかに運ばれていく
そして急に眠くなってゆく
どのくらいの時間が過ぎたのだろうか
ゆっくりと目を開けた
病院の手術室がそこにあった
視力を完全に回復したメガネは外に出て
目に見える風景を見渡した
メガネは見えないものを
見ることができなくなっていた
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