三月の手紙 デッサン/前田ふむふむ
、死のかたちが視線にそって、描かれる。
次々と波打つように。
わたしは、大きく声を、
茫々とした見える死者にむければ、
小さな胸の裂け目から、
仄かに、流れるみずが、
わたしの醒めたからだの襞を走る。
ああ、生きているのだ、
詩の言葉の狭間を。
わたしは、充足した世界を、埋めつくしている両手を、
空白のそとに捨てて、
ふたたび、見えない風に吹かれる。
夕陽の翼から、零れるほどの、
先達が見つめた、
恋人よ。
赤く沈む空に、昂揚した頬をあげて、
梟は、今日も飛び立ったのだろうか。
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