砂漠となる/光冨郁也
冬の空は乾いている。遠くで鳥の鳴き声がしている。車のデジタル時計を見る。空腹で気持ちがわるく、くらみを覚える。午前9時。いや10時だったろうか。もう時間など意味はないかもしれない。昨夜、車の周りにいた数頭の狼らはいなくなっていた。眼鏡のフレームを人差し指で上げる。ライターをジーンズのポケットに入れる。おぼつかなく、車の外に出る。荒れ地を歩く。だるい。ふらつく。空を仰ぐと、ただ青い。風が吹くたびに、荒れ地に点々とした錆びた色の草が波打ち、地平まで広がっていく。振り返るときのうまで、後方の草原という海原でひとり漂流していたのがわかる。胸のなかまで、風が音を立てて、吹き込んでいく。
荒れ地を歩
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