帰り道/川口 掌
 
   

いつの頃だか忘れたまだまだ世界は光に満ち溢れていた
毎日毎日学校が終わり家へと向かう帰り道
道端に無造作に転がる石ころ
歩道と道路の境目ブロックの下からしぶとく顔を覗かせる名も知らぬ雑草
誰かの投げ捨てた空き瓶の破れた破片
目に映る全ての世界が小さな心に キラキラ キラキラ と語りかけていた
小さな心はほんの目と鼻の先程の道のりを
大きく深呼吸しながらたっぷりの時間をかけて歩いた
小さな体に入り切らない程大気を吸い込んで
石ころや雑草やガラスの破片が放つ輝きを心に焼き付けた


時が経ち体の大きくなったそれでも変わらぬ小さな心は
日々変わらず過ぎていく会社か
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