若水/佐々宝砂
うっとりと眠っていた二人の鑑賞者は
ココア色の映画館で目醒めた
過去の亡霊の囁きももはや息絶え
湿っぽい空気と静寂があたりを支配している
静寂を保ったまま映画館が崩壊する
暗闇に慣れた目は突然の晴天に盲いるが
どこからか聞こえる硬質なワルツを頼って
二人は緑あふれるプロムナードに進む
惨殺された彫像と気ままに動く遊具の類が
プロムナードを飾っているけれど
盲いた二人はただワルツに惹かれて歩くばかり
ワルツを奏でるのは若水にあふれる噴水
尽きることのないその泉を二人は争って飲む
老いることなく 渇きが癒えることもなく 永遠に
二十歳の作。なんでか急に出したくなった。
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