逆さ睫/
倉持 雛
ちくり
と痛む
その光景を
僕の二つの眼球は
とらえて
脳へと
送信した後
心という
厄介なものにまで
伝えてしまった
ものだから
また
ちくり
と痛んだ
そのとき
閉じた瞼
によって
睫が眼球に
こびりついた
この偶然
により
僕は
泣くことを
許された
ような
気がしたんだ
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