カーニバル/真田徹基
 
真っ白な空間が、人の間にできていた.
そこはとても安心で、一人でいるよりも誰にも気づかれない.
その空間の隙間に入り込み、自由に思いを巡らせる瞬間が好きだった.


今日も彼は深く、緩やかに思考の沼に沈没していく.
目の前からゆっくりと、消去されていく真昼と現実感.
カーニバルは最盛へと突入し、
たった一人であれば異端すら受け入れる.
分別などなく何もかも享受し飲み込む激しい渦の中で
彼は今日、人魚を殺して食べていた.
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