法定速度/ぽえむ君
 
その道は真直ぐに港へ向かっていた
信号も交差点もなく
対向車線もない一方通行の
横に車一台が走る
天気の良い日は海を片手に見ながら
十数キロにわたる
すがすがしい道路だった
最初の一台目が道路に入る
法定速度は三十キロメートル
用心深いそして規律にはうるさい
ドライバーだった
先頭は法律に従った
その後に大きなトラックが
さらに後ろは家族を載せた乗用車
最近販売された新車などが
どんどん入ってくる
法定速度は三十キロメートル
前にしか進まない道を何十台
何百台近くの車が走ってゆく
それでも先頭は法律に従った
法定速度は三十キロメートル
道路は貨物列車になってゆく
先頭はなぜその速度が最高なのか
その理由は知らない
そこに書かれてある数字を
きちんと守ることが正義だと思っていた
その道はすでに
一台の車も入る余地はなくなっていた
法定速度は三十キロメートル
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