桜の面影/ぽえむ君
 
生まれた時から
ぼくには父親がいなかった
母からは
父は遠いところで仕事をしている
としか言われていなかったが
ぼくは父の写真を一度も見たことがない
子どもの頃
母に連れられて
どこかの家に行ったことがある
その家には大きな桜の木があった
その家族の人たちと母は楽しそうに話していた
特に男の人とは親しそうだった
ぼくはその時の母がどこか気に入らなかった
だから一人で桜の木の下で遊ぶことにした
桜はとてもたくさん咲いていた
「きれい」という言葉は
ここで知ったのかもしれない
下から桜を見上げると
青い空がまぶしくなった
何かの加減だろうか
桜の枝の間から男の人
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