ラーク タール1ミリグラム/高田夙児
 
    Cは座ったまま眼を閉じて ぼそりと彼女の名を呟いた
    3人で会うことが多かった冬のダッフルコートを着た僕らは
    彼女を挟んで 互いに手を繋いで街を歩いた
    雪に濡れた水溜りを飛び越えたり Bのいるコンビニに行って
    びっくりするくらいお菓子を買い込んだり

    Cは ねえ楽しいね ってばかり繰り返していた
    彼女はCと僕からあげた両足首のアンクレットを翻しながら
    うん とっても、よ と答え続けていた

    さあ もう春になったさ 通り道の中学の桜の下を通りながら
    ある日 Cは寂しそうに言った そうねと彼女もぽつりと
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