17/船田 仰
年がら年中ことばを弄ぶには
シャツの数が足りない
きみだってそのはちみつ味のキャンディで
うちくだきたい距離があるんだろう
不健康そうなエンジンのおとを聞きながら
注意深くみちばたの草をみつめる
ときどき横切るかげのようなもの
ぼくこそかげのようなもの
ホッチキスの芯がなくなって
立ち尽くした廊下のすきまから
きみが顔をだした
おはようとさよならは夕方でまじりあう
それから?
変調したメロディーが閃光をはなつ
ぼくは放心したようになって
ホッチキスをしばし忘れる
もらえるものはもらっとくよ
ボタンにふちどられて青紫になったぼくたちみんなの
かげが
ネガになって
焼けて
また通り過ぎた認識のうえを交差して
みんな笑ったふりをする
教科書の重みはおきざりにしたまま
だれかに笑われることがきらいで
世界はもどって
ねえ年がら年中信じつづけるには
ライターの数が多すぎる
きみだってあしたどこで会っても
おはようとさよならを使いこなすんだから
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