空のかばん/ぽえむ君
終点の駅に着いたので
降りようとしたら
網棚にかばんが置いてある
すでに乗客は誰もいない
きっと忘れ物なのだろう
駅員さんに届けてあげよう
かばんはとても軽かった
何も入っていないのかもしれない
空のかばんであれば
届けるだけ手間なので元に戻すか
持ち主には申し訳ないが
かばんを開けることにした
ジッパーを下ろすと
かばんの中から天井に向かって
大きな虹が広がった
空(から)のかばんは空(そら)のかばんだった
中を覗くと虹以外
何も入っていない
口を閉め直してそっと網棚に戻し
平静を保った表情で駅を降りた
かばんを乗せた列車はそのまま
地下にある車庫へと進んでいった
見上げた空は
ようやく青空が見え始めていた
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